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  • 執筆者の写真ヴェルデ

セレナータの日記帳

セレナータが書いていたであろう紙媒体の日記帳がある…


247ページ 日付 解読不能


「あぁ、私はきっと世界で1番の不幸者だ」

何年か前まで、私はずっとそう思っていた。

私、セレナータ・ディ・リトルディーヴァは数年前のあの日、思い出のたくさん詰まった自分の生まれ故郷を戦場にされ、戦火の下で追い回され、そして大切な人を守るために捕まった。

それからの生活は酷いものだった。内戦下の中捕まった私は幼く、戦況を押されつつあった反乱軍のストレスのはけ口になってしまっていた。肉体はボロボロになり、女として弄ばれ、無秩序な軍の中で最も醜い場所、そう言いきれる場所で過ごしてきた。

助けなんてない。逃げ場も希望も何もありませんと、そう思わせるようなところだった。

でも私は耐えた、耐えればまた大切な人に会えるかもしれないからと。そう自分に言い聞かせながら私はひたすら耐え抜いた。

何日も、何ヶ月も……何年もこんな生活をしていたら次第に意識も朦朧としてくる。自分は死ぬのかもしれない。いや、死んでしまうんだと実感させるような。そんな感覚だった。……あの時の最後、私は手足に鋭い痛みを感じて、そのまま意識を失った。

今考えたらそれで良かったのかもしれない。さらなる痛みと苦痛を受けなくて済んだのだから。


どれだけの月日がたったか分からないある日、私はよくわからない機械に包まれながら目を覚ました。その時にはもう手足からは感覚は消えていた。痛みも、苦しみも、…それ自体が存在するという感覚も。目を覚ましたその時私の手足は片方ずつ、金属の塊に置き換わっていた。そしてボロボロの体には包帯が巻かれ、残った人の手には赤く染った包帯が巻かれていた。

それからの私は孤児院で過ごすことになった。

とは言ってもここで過ごした時間はごくごく少ない時間だ。

失くした手足を上手く動かす練習と歌で有り余る時間を過ごしたが、周りの目は化け物の見た目をしていたらしい私にはとても冷たかった。私はそんな孤児院が月に一度開いていた引き取り手の訪問が大嫌いだった。有り余った時間は奪われ、自分の姿を晒し者にされるそんな日が大嫌いだった。

何度目かの訪問の日、私は集められた場所から抜け出し1人、人気のない小部屋で座り込んでいた。

私がヴェルデ姉に出会ったのはその時が初めてだった。

この見た目だった私に彼女は分け隔てなく接して、さらには私のことを引き取るとまで言い出した。

程なくして私は機械の体を持つ種族、「キャスト」として生まれ変わり、興味のあった、歌の力を見込まれ、アイドルとなった。売り方が良かったのか、世間に対する私への評価は上がっていき、メディアへの露出も増えるようになった。私は今、アイドルとして、アークスとして恩人や大切な人、友達や仲間たち、そして私の音楽を好きでいてくれる全ての人のために歌を歌い、音を奏で、踊りを踊っている。

「あぁ、私はきっと世界で1番の幸せ者だ」

遠い未来まで、私はずっとそう思うだろう。



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